交通事故の記憶を思い出せないのはどうして?
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交通事故の記憶が思い出せない
先日、夢を見たことにより、突然30年前の交通事故の直前の記憶を思い出しました。
私は交通事故の直前、自分がどんなことを考えて、どのような行動をとったのか、完全に思い出したのです。
しかし、その思い出したことを記事に残しておこうと、夢により思い出した事以外の詳細を思い出そうにも、はっきりと記憶のあることは、ほとんどなく、その当時の自分の学年さえも曖昧で、親や一緒に事故に遭った妹に確認しなければいけないような状態です。
しかも事故に遭ったのは、夏休み最後の日でしたので、翌日からの学校はどうしたのかなど、全く記憶がありません。事故で前歯が折れ、顔も腫れたので、友達ともきっと何らかの話をしていると思うのですが、全くそんな内容が思い出せないのです。一体私の記憶はどうなっているのでしょうか?
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物事が記憶される道筋
人が何かを記憶するために、海馬という部分が関係してきます。この海馬で、記憶することの仕分けを行い、長期的に記憶すべきことは、神経細胞によって大脳へと送られると言います。
しかしここで、長期的に記憶すべき事柄であっても、さまざまな理由によって、記憶が抜け落ちてしまったような、いわゆる記憶喪失といった記憶の障害が発生することがあります。
一時的な記憶が思い出せない障害
私のように、事故に関する一時的な記憶が思い出せない症状は、意外にも多くの方が体験されています。
ちなみに私が一緒に事故に遭った妹は、その後大人になって再び別の交通事故に遭遇してしまったのですが、この時の記憶のうち私のように思い出せない部分が多くあると言っています。
このような記憶の障害はどうとらえたらよいのでしょう。
私が遭遇した事故のように、明らかに相手の方に非があることがわかっている事故の場合はいいのですが、現場に当事者しか存在せず、事故の過失割合を決定するにあたって、事故時の状況をきちんと説明しなければならない場合、困りますよね。
結論から言えば、この思い出せない記憶は、いつ戻るのかわかりません。
明日になれば急に思い出すかもしれませんし、死ぬまで思い出すことはないかも知れません。
病院で記憶が思い出せないことを伝えることが出来ても、そのことを証明することは非常に難しいのです。ですから思い出せないときは、思い出せないと答えるしかなくなるわけです。
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解離性健忘
しかし、今となっては本人は全く覚えていないが、事故直後にきちんと実況見分などに自分で答えていたと、周囲の人からの証言でわかるということもあります。このような状態は、解離性健忘といわれます。
ちなみに解離とは自分が体験した出来事の記憶や、その時考えていたこと、感じていた気持ち、行動したことなどの一部を、脳が勝手に自分の意識から切り離してしまう現象をいいます。
いつもは温和な人が、お酒を飲んで暴れたことを、翌日全く覚えていない場合や、いつもなら涙もろい妻が、夫の突然の死に、まるで別人のように涙一つ流さず、淡々とした表情で葬儀の準備を毅然とこなしていたなど、身近でも話題に上ったことがある方もいるのではないでしょうか。
解離性健忘では、耐えられないような辛い出来事や強いストレスを体験した時に、その一部の期間や内容を忘れてしまう現象です。すぐに思い出す場合もあれば、永久に思い出すことがない場合もあり、記憶の喪失障害が起こる期間や範囲、回復時期や度合いは人によりさまざまです。
逆行性健忘
解離性健忘とは別に、外傷性の脳の損傷により起きる記憶障害もあります。これは逆行性健忘と言って、事故などの起こった事柄の前のことを思い出せない現象です。
逆行性健忘の場合も、記憶の喪失障害が起こる期間や範囲、回復度合いは人によりさまざまです。
記憶ってどのように思い出すものなの?
私たちが記憶と言っているものは、よく例えとして、引き出しにしまわれているなんて言ったりします。ですが最近の研究では、実際はどうやらそんな単純なものではないようです。
私たちが記憶を思い出す時、写真や映画のように、焼き付けられたものをそのまま引っ張り出してくるのではありません。思い出したい事柄には、その時に体験したさまざまな事柄が密接に関係しています。例えばその時に聞こえていた音楽や、におい、感じたこと、見えたもの、温度など種々さまざまなものです。
私たちが記憶を思い出す時、そのようなさまざまな事柄の記憶を一から再構築させて、脳の中で再現しているそうなのです。脳内の細胞や、さまざまな刺激を伝達する神経細胞であるニューロン
や、その接合部分であるシナプスは、時間の感覚を理解していて、それにより起こった事象の前後の時間の流れなども把握して記憶を再構築するというのですから驚いてしまいます。
つまり記憶が蓄えられている場所なんて、脳内のどこにもないということなのです。
失った記憶はどうなる?
失ってしまった記憶は、いつ戻るのか、もしくは戻ることは無いのか、誰にもわかりません。しかし、私と同じようなパターンの一部的な記憶の喪失の場合、忘れていることによって不幸になったりはしていません。
もしかすると、思い出す方が恐怖などによってトラウマを引き起こし、自転車に乗れなくなったり、外出が怖くなったりといった影響が出るのかもしれません。
人間の脳はまだわからないことだらけ。知らなくても良いことは、人間が考えるよりも本能的に、記憶が再構築されないようにフタをしてくれるような防衛システムが働くように出来ているのかもしれませんね。
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