どうして「つくつくぼうし」には「セミ」がつかへんの?
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秋の気配を感じます
私はほとんど毎日、夕方に近所をウォーキングしているのですが、最近は暗くなるのが早くなってきました。ほんの少し前までは、7時半ごろを夕方と感じていたのに、今日なんて6時半になるまでに薄っすら暗くなってきました。秋が近づいていますね。
ところで我が家の庭には、いろんな昆虫が季節ごとに姿を見せてくれるのですが、夏の間は蝉がずっとせわしく鳴いていました。その蝉の種類も変わってきて、最近では「つくつくぼうし」の声が聞こえることがありました。
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(つくつくぼうし)
息子の素朴な疑問
息子が庭でつくつくぼうしの鳴き声を聞いて、ふと私に聞いてきました。
「お母さん、なんでつくつくぼうしは、アブラゼミとかクマゼミみたいに『セミ』がつかへんの?」
確かに!私はあまり昆虫に詳しいことはありませんが、それでも「つくつくぼうし」と「ひぐらし」には、そう言えば「セミ」がつかないなぁ、なんでやろ?と思い、調べてみました。
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つくつくぼうしはどう書くの?
つくつくぼうしは、ちょっと調べただけでも色んな書き方や呼び方をすることがわかりました。
・くつくつぼうし
・つくつくぼうし
・つくつく法師
・法師蝉
・寒蝉
・筑紫恋し
もっと深く調べたら、まだまだ見つかるかも知れません。これだけあることからも、つくつくぼうしが昔から私たちの暮らしの身近に存在していたことがうかがえますね。
名前の由来は?
つくつくぼうしの名前の由来の基本は、私たちの耳に聞こえた鳴き声だという説が有力です。
聞こえ方は日本人と外人で、同じ鳴き声でも聞こえには違いがあるように、同じ日本人でも時代や地域によって少しづつ違いがあったようです。
平安時代にはくつくつぼうしと言われていたのが、鎌倉時代あたりにはつくつくぼうしとくつくつぼうしが二分するような感じだったと言われています。
やがて室町時代の後半にはつくつくぼうしが主流となり広がっていきました。
ちなみに「つくつく法師」の「法師」は当て字だと言います。
つくつくぼうしの名前の由来には面白いものもあり、同じく聞こえが「オーシーツクツク」と聞こえたことから、「おうしいつくつく」になり「ほうしいつくつく」に変化し、「つくつくほうし」になったという説も。皆さんは、つくつくぼうしの鳴き声、どのように聞こえますか?
「せみ」のつく呼び方
正式な和名ではつくつくぼうしには「セミ」はつきませんが、「セミ」のつく呼び方はあります。
それが「法師蝉」と「寒蝉」です。
法師蝉はつくつく法師からきているのだと、すぐにわかりますが、「寒蝉」はつくつくぼうしの鳴き声が聞こえるようになる時期が関係しています。
つくつくぼうしの成虫は、他の蝉も多く鳴いている7月ごろから発生しますが(※地域差有り。)、この頃はまだ数が少なく、鳴いても他のあぶらぜみやくまぜみの声にかくれてしまいます。
他のせみの数が少なくなる8月下旬から9月上旬にかけて、つくつくぼうしの鳴き声が目立つようになります。この頃はお盆も過ぎ、私たち人間は「暑さ寒さも彼岸まで」なんて言って、徐々に秋の訪れを感じるようになります。つまり次に寒い冬を控えた秋を呼び込むセミということで「寒蝉」と言うのだそうです。
ちなみにほとんどの地域では先に書いたように、つくつくぼうしが鳴く季節は、他のせみより少し遅い夏の終わりという認識ですが、八丈島(伊豆諸島の島:東京都)については少し事情が違うそうです。
八丈島では蝉はつくつくぼうし1種しか生息しておらず、そのため個体数も多く、ひと夏中ずっと蝉と言えばつくつくぼうしという状態で、「つくつくぼうしの楽園」なんだそうです。
「筑紫恋し」とは?
(つくつくぼうし)
つくつくぼうしの呼び方で、一風変わっているのが「筑紫恋し」です。
平安時代の「くつくつぼうし」から室町時代後半の「つくつくぼうし」へ定着し
てくると、一部で「つくしよし」という聞こえ方が表れ、それがやがて「つくしこいし」と変化していきました。
この聞こえ方に、俗説である「旅先で死んだ筑紫(今でいう福岡県)の人が蝉になった」というお話とが絡んで、「筑紫恋し」になったという説もあります。この「筑紫恋し」も、つくつくぼうしの別名と紹介されている辞典があります。
その他の説
その他、青森県にもつくつくぼうしに関する由来話があるそうです。
ツクツクボウシの由来
ツクツクボウシという名前は青森県弘前市の古い習わしから由来する。
「ツク・ツグ」とは方言で「とり憑く」を意味し、「ボウシ」は「法師」つまり僧侶を意味する。
江戸時代中期、この地では食料不足によりたびたび口減らし(子殺し)が行われていた。
その惨状を見兼ねた僧侶たちが、死んだ子供たちの霊魂を鎮めるために楽器を鳴らしながら村を廻向したという。
その楽器の音色とセミの鳴き声がよく似ていた事から、村ではそのセミをツクツクボウシという名で呼ぶようになった。
https://yokooooooo.exblog.jp/11090864/より
富山県の方言では「つくつく」というのは「尖っている」という意味だそうで、富山弁でつくつくぼうしを解釈すると、「尖った帽子」という意味になるそうです。
「つくつく法師」は、読みだけで解釈すると「つくつくほうし」になるので、「つくつくぼうし」なら「法師」より「帽子」のほうが、合っているのでは?という説もありました。
江戸時代は「つくつくぼうし」も「ひぐらし」も同じせみだった?
江戸時代の識者の中には、つくつくぼうしとひぐらしを同じ蝉と捉えているような記述が伺えるそうです。
ひぐらしは、つくつくぼうしと同様、和名に「セミ」とつかない蝉です。ひぐらしにも名前の由来はいろいろあるのですが、有力なのは「日を暮れさせる蝉」という説。
ひぐらし
どちらも「セミ」のつかない蝉ではありますが、つくつくぼうしとひぐらしはもちろん違う蝉です。
結局の所、どうして「セミ」がつかないのか?
色々調べると、興味深いことがわかって楽しかったのですが、結局「セミ」のつかない理由で一番有力な説は、ゴロが悪いということのようです。これはひぐらしも同じようです。
確かに「つくつくぼうしぜみ」とか「ひぐらしぜみ」とか言うと、「あぶらぜみ」や「くまぜみ」と違い、少し違和感を感じますね。
ちなみに名前が長すぎて一部が省略されて和名となっている蝉というのもあって、「にいにいぜみ」は本来「セミ」がついているのですが、「くろいわにいにい」とか「ちょうせんけながにいにい」という蝉は、名前が長いという理由で「セミ」がつかない蝉です。他にも「くろいわつくつく」なんて、「つくつくぼうし」の「ぼうし」が省略されています。
蝉の世界も奥が深いものですね!「セミ」のつかない理由がゴロというのは、息子には納得する理由になるのかどうか…
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